THE MODEL(ザ・モデル)とは?4分業の設計・数値管理・導入の注意点
THE MODEL(ザ・モデル)とは、営業の流れを4つの役割に分け、それぞれの数字をつなげて管理する営業組織の型です。 セールスフォース社の実践から生まれ、日本ではSaaS企業を中心に広まりました。
大事なのは、分業すること自体ではありません。「売上までの流れ全体を、数字のつながりとして見える化し、改善できる状態を作ること」が本質です。
4つの役割と数字のつながり
| 役割 | やること | 主なKPI | 次に渡すもの |
|---|---|---|---|
| マーケティング | 認知を広げ、見込み客を集める | リード数、MQL数、CPA | MQL(基準を満たした見込み客) |
| インサイドセールス | 見込み客を選別・育成し、商談につなげる(詳細) | 商談化数・率 | SQL/商談 |
| フィールドセールス | 商談を進めて受注する(クロージング) | 受注数・率、受注額 | 契約と、顧客の期待値の情報 |
| カスタマーサクセス | 顧客の定着・継続・拡大を支援する(詳細) | 継続率、NRR | 解約理由・活用事例(前の工程へ戻す) |
数字は、リレーのバトンのようにつながっていきます。
例:リード1,000件 × 商談化率15% = 商談150件
商談150件 × 受注率25% = 受注37件
受注37件 × 平均単価60万円 = 売上2,220万円
このつながりが見えていると、「売上が足りない」という漠然とした悩みを、「どの段階で、量と率のどちらが足りないのか」という具体的な問いに変換できます。これがTHE MODELの実務での価値です(KPIツリーの設計/ファネル分析ツール)。
分業すると何が良くなるのか
- 専門化:各役割で必要なスキルは実際に異なります。素早い初動と見極め(インサイドセールス)、課題の合意と稟議の設計(フィールドセールス)、定着支援(カスタマーサクセス)——一人で全部を高いレベルでこなせる人は稀です。分業はチーム全体の平均値を上げます
- ボトルネックがわかる:数字のつながりを見れば、どこにテコ入れすべきかが特定できます
- 再現性:役割ごとに型を作って訓練できるので、採用と育成が仕組みになります(イネーブルメント)
最大の弱点は「分断」。接続の設計が本体
THE MODELへの批判の大半は「分業したら顧客体験と数字が悪化した」というものです。原因はほぼ共通しています。分業だけ導入して、部門と部門の「つなぎ目」を設計していないことです。
つなぎ目の設計・3点セット
- 引き継ぎ基準を一緒に決める:MQL(マーケ→IS)や商談の定義(IS→FS)を、渡す側と受け取る側が共同で決めます。決めて終わりではなく、四半期ごとに受注実績と突き合わせて更新します(基準設計の詳細)
- 初動スピードの約束(SLA):「リードには24時間以内に対応する」といった部門間の約束を、文章にして残します
- 顧客情報を一気通貫でつなぐ:ヒアリング内容・期待値・決裁の背景がCRM上で引き継がれ、顧客が同じ説明を繰り返さずに済む状態を作ります
部門KPIの副作用に注意
各部門が自分のKPIだけを追うと、質の劣化が連鎖します。
対策はシンプルで、評価に「後工程の成果」まで含めることです。インサイドセールスは商談化数に加えて受注への貢献を、フィールドセールスは受注に加えて初期解約率を見ます。
顧客から見て「1本の体験」になっているか
分業は社内の都合であり、顧客には関係ありません。「担当が3回変わり、毎回同じ説明をさせられる」なら、それは分業の失敗です。
引き継ぎの場に前後の担当が同席する。CRMで履歴を共有する。次の担当の役割を事前に説明しておく。顧客から見て一貫した1本の体験になるよう、つなぎ目を設計します。
導入判断:向く組織・向かない組織
| 向く | 向かない・慎重に |
|---|---|
| リード量が多い(営業が処理しきれない) | リードが月数件(分業する対象がない) |
| 商談が標準化しやすい商材 | 超大手向けの完全個別提案型(ABM型が適合) |
| 継続課金・LTV型ビジネス | 単発売り切りでCS機能の意味が薄い |
| 組織規模が2桁以上 | 数名の組織(全員が全部やる方が速い) |
小さな組織での現実解は、役割を分けることではなく「プロセスとして意識すること」です。営業が一人でも、獲得・選別・商談・フォローを別の仕事として数字で管理することはできます。それがTHE MODELの考え方の、いちばん小さな実装です。
導入の手順
- まず現状のファネル数値を測る:リード→商談→受注の現状値を把握します。測れない組織は、分業しても改善できません
- 最初に分けるのはインサイドセールス:初動対応と選別の専任化が、いちばん効果の出やすい第一歩です
- 基準とSLAはセットで作る:組織を作ってから基準を作るのではなく、同時に設計します
- CSは「受注の質」とセットで立ち上げる:フィールドセールスの期待値設定に規律がないままCSを置くと、解約の後処理係になってしまいます
まとめ
- THE MODELの本質は分業ではなく、売上までの流れを数字のつながりとして設計・改善できる状態を作ること
- 価値は専門化・ボトルネック特定・再現性。弱点は分断で、つなぎ目(基準・SLA・情報)の設計が本体
- 部門KPIは後工程の成果まで含めて設計し、質の劣化の連鎖を防ぐ
- 小さな組織は役割を分けず、「プロセスの数値管理」として考え方だけ先に取り入れる
各機能の詳細はインサイドセールス・カスタマーサクセス、SaaS事業全体の指標はSaaS営業を参照してください。
よくある質問
THE MODEL(ザ・モデル)とは何ですか?
営業プロセスをマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスの4機能に分業し、各段階の数値をつなげて管理する営業組織の型です。セールスフォース社の実践に由来し、日本ではSaaS企業を中心に普及しました。
THE MODELはどんな組織に向いていますか?
リード量が多く、商談が標準化しやすく、継続課金型の商材を扱う組織に向きます。逆に、リードが月数件の組織、超大手向けの個別提案型営業、単発売り切り型では、分業のオーバーヘッドが利点を上回ることがあります。
THE MODEL導入で最も失敗しやすいポイントは?
部門間の「引き継ぎ基準」の設計不足です。商談の定義やリードの質の基準を共同で定めず、各部門が自分のKPIだけを追うと、数字の押し付け合いと質の劣化が起こります。分業より先に接続の設計が必要です。